お悩み相談〜視覚障害の重度化
視覚障害が重度化してきた
視覚障害が重度化してきたときのお悩み相談をまとめました。
- Q1.社会活動や職場復帰をするためにこれからどうすればよいでしょうか?
- Q2.視覚障害が重くなり、休職か退職か継続就労か迷っています。どのようにしたらよいでしょうか?
- Q3.まだ症状が固まっていないので手帳をとれない場合は、どうしたらよいでしょうか?
- Q4.視覚障害が重くなったら日常生活はどうしたらよいでしょうか?
- Q5.視覚障害者が単独で安全に通勤するためにはどうしたらよいでしょうか?
- Q6.職場復帰するためにはどうしたらよいでしょうか?
- Q7..就労継続や復職ではなく、転職するにはどうしたらよいでしょうか?
- Q8.視覚障害者の職業と言われる「あん摩マッサージ指圧師・鍼師・灸師」の仕事に転向したほうがよいでしょうか?
- Q9.視覚障害者が使えるパソコンはどのようなものでしょうか?
- Q10.視覚障害者はパソコンスキルをどこで習うことができるでしょうか?
Q1.社会活動や職場復帰をするためにこれからどうすればよいでしょうか?
A1.「見えない」「見えにくい」状態で、社会復帰をする手立てがあります。それを「リハビリテーション」と言います。この社会的リハビリテーション・職業的リハビリテーションを利用して、たくさんの視覚障害者が社会に復帰して、自分の人生を歩み続けています。
まず、眼科の医師に病気の状況、視力、視野などをしっかりと説明してもらいます。さらに眼科病院のロービジョンケア外来(日本眼科医会ロービジョンケアサイトに施設一覧があります)において視力や視野の補償をするための弱視レンズや遮光レンズ、拡大読書器の使いかた、固視訓練などを受けたり、カウンセリングを受けたりします。
次に、社会的リハビリテーション・職業的リハビリテーションについて施設や期間、内容などの情報収集をします。同時に生活の基盤となる障害者手帳や障害年金(障害基礎年金・障害厚生年金)の取得、就労するために障害者雇用率や障害者雇用推進助成金制度などを理解して、社会復帰の道筋を検討して行きます。眼科の医師やケースワーカー、リハビリテーションの専門家、産業カウンセラー、社労士とよく相談しながら手立てを考えて進めていきましょう。
Q2.視覚障害が重くなり、休職か退職か継続就労か迷っています。どのようにしたらよいでしょうか?
A2.進退を判断する際には、次のことをしっかりと理解して検討することが大切です。
検討に当たっては、必ずそれぞれの専門家と相談して、決して自分一人で判断しないことです。
下記のプロセスを着実に踏んで、早まることがないように注意します。
- A2-1.現在の目の病気の状況と障害の程度
- A2-2.将来病気が進行したり、見えかたが変わる可能性について
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A2-3.社会的リハビリテーションを受けてできるようになること、できないこと。
例えば歩行訓練を受けると単独歩行の技術を取得できますが、オリエンテーション能力がないと目的地に行けません。
つまりルートの理解とともに、音やにおい、舗装の状況などのランドマーク、出会った人の介助をうまく利用することが必要です。 - A2-4.利用できる福祉制度は、年休、傷病休暇、退職金、障害者手帳、障害者年金、日常生活用具補助、市区町村の支援制度、誘導介助、家事援助
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A2-5.復職の可能性、その復職のための準備は、社会的リハビリテーション・職業リハビリテーション、在職者訓練、地域ITサポートセンター、地域障害者職業センター、派遣型ジョブコーチ支援などを利用します。さらに、事業所のCSR(企業の社会的責任)、コンプライアンス(法令遵守)、ダイバーシティ(従業員の多様性の尊重)の促進状況、事業所の障害者雇用実績・障害者雇用率を確認します。
また、企業トップが障害者雇用に前向きか、人事担当者・部署のコンセンサスの形成(他社の事例を紹介するなど職場の理解促進)状況を見極めます。 -
A2-6.自分の経済状況、家族の状況、将来設計は、これら6つを総合的に精査して判断した上で、事業所と話し合いましょう。
必要であれば、障害者就労支援組織のカウンセラーや社労士などにも話し合いに同席してもらいます。
Q3.まだ症状が固まっていないので手帳をとれない場合は、どうしたらよいでしょうか?
A3.症状が安定しないときは障害者手帳の交付は行われません。
福祉や年金の制度は、障害者手帳を持っていないと利用できないものと、持っていなくても利用できるものとがあります。
眼科の主治医やカウンセラー、 福祉制度に詳しいケースワーカーや患者団体の相談担当者などとともに利用できる福祉制度の活用、将来に備える手立てを検討し準備します。
例えば、在職者訓練は現在のところ障害者手帳を持っている人が対象ですが、障害者職業訓練の知識技能習得コースは難病指定された病気の場合も受講可能です。
ジョブコーチ支援は、障害者手帳はまだ取得してなくても就労に困難を生じている人も対象になります。
障害者手帳の習得は、福祉制度の利用や年金の習得などを通して、その後の生活に大きく関わります。
地域の就労支援センターのケースワーカーなどを支援の中心者として長期にわたる支援体制作り上げていくことが重要です。
Q4.視覚障害が重くなったら日常生活はどうしたらよいでしょうか?
A4.目が見えなくなっても、見にくくなっても、身の回りのことや日常生活で必要なことを自分ですることは可能です。
一人で歩くことも、文字処理をすることもできます。
そのためには、リハビリテーションのトレーニングを受けることが必要です。
まずは眼科の主治医に相談します。
さらに「ロービジョンケアを行っている眼科」、または「 リハビリテーション病院」を紹介してもらいます。
例えば、インターネットで ロービジョン学会を検索してください。
ロービジョンケアを行っている眼科が見つかります。
途中であきらめることなく、視力の低下の状況に合わせて調理や金銭管理など日常の生活技術を指導してくれる専門家に巡り合うまでじっくりと探し続けてください。
Q5.視覚障害者が単独で安全に通勤するためにはどうしたらよいでしょうか?
A5.リハビリテーションの一つに「歩行訓練」があります。
見えかたに合わせて白杖を使って歩行する方法を指導してもらいます。
単独で公共交通機関を利用して通勤できるようになるまでにはある程度の時間が必要です。
歩行訓練士が白杖の長さを処方し、握りかたや振りかたを理解し、ルート上のランドマークの確認方法、障害物の迂回方法などを習い、屋内から近隣、駅までなどと歩行範囲を増やしていきます。
安全第一に、じっくりと取り組むことが大切です。
★歩行訓練士に通勤時間帯で通勤ルートの歩行訓練やオフィスのレイアウト、オフィス周辺の確認をしてもらうと、注意すべきポイントを認識することができます。
労働災害の対策として重要です。
Q6.職場復帰するためにはどうしたらよいでしょうか?
A6.まず、視覚障害者の就労の専門家と必ず相談をしてください。
場合によっては、医療やリハビリテーションの専門家に入っていただくことも必要です。
そのうえで職場の上司や人事、産業医を交えて、今の職場での就労継続についてあらゆる可能性を検討してください。
職場復帰に向けてどのように進めていくか、リハビリテーション訓練や職業訓練をどのようにするか、休職や在職者訓練などの制度についてなど、相談と情報収集をしっかりと行いながら進めることが、大きなポイントです。
実際に職場復帰を果たした視覚障害当事者と情報交換したり、体験談を聞いてみるのも一つの有効な方法です。
どんなにつらくても、専門家に相談をせずに一人で判断して職場を辞めてしまうことだけは避けましょう。
Q7.就労継続や復職ではなく、転職するにはどうしたらよいでしょうか?
A7.視覚障害者の就労支援機関などの専門家と必ず相談をしてください。
場合によっては、医療やリハビリテーションの専門家に入ってもらうことも必要です。
転職を考える前に、まずは今の職場への復帰、配置換え、給与、職位など就労継続のあらゆる可能性について、よく検討してください。
その上で転職することがあなたにとって本当にふさわしい選択かどうかを家族も含めてしっかりと判断してください。
転職すると判断したら、ハローワークの職業指導官、視覚障害者の就労支援機関などの専門家とともに進めかたを検討してください。
その際、次に勤めたい事業所の給与、処遇、必要なスキル、通勤ルート、視覚障害者雇用の実績などを確認するなど万全の準備をして下さい。
次の職業を探す際に技能習得が必要になることもありますから、経済的・時間的な準備が必要です。職業訓練を受けるときに、所得がない場合には 就労準備助成金を得ることもできますから、ハローワークで相談して下さい。
様々な情報を精査しないままに辞めたいという気持ちだけで判断することはデメリットが大きいと言えます。
Q8.視覚障害者の職業と言われる「あん摩マッサージ指圧師・鍼師・灸師」の仕事に転向したほうがよいでしょうか?
A8.「あん摩マッサージ指圧師などは」は技術職です。
資格を習得した後は自分で治療院を開く、病院などに就職する、一般企業の健康管理センターなどに就職するという選択肢が考えられます。
職業とするには次のことが必要です。
自分に合っているかどうか情報収集を入念に行って、よく考えたうえで決断をしてください。
- A8-1.高校卒業レベルの学力が求められる「鍼灸手技療法過程」、中学卒業レベルの学力が求められる「保健理療科」の教育課程があります。この過程を収め、かつ国家試験に合格して資格を取得することが条件となります。
- A8-2.案内文などを作成する文書作成やメールで連絡する能力
- A8-3.顧客の情報やカルテの入力、予約管理などのデータ処理能力
- A8-4.現金(施術代)や備品の管理、シーツや施術着などの衛生管理
- A8-5.接客に値するコミュニケーション能力
Q9.視覚障害者が使えるパソコンはどのようなものでしょうか?
A9.市販のパソコンに次のようなソフトやハードを組み込むことで、視覚障害があっても利用することが可能になります。
- A9-1.画面の文字などを拡大するソフト
- A9-2.画面の文字などを音声で読んでくれる画面読み上げソフト
- A9-3.画面の文字を点字に変換して表示する点字ディスプレイ
- A9-4.基本ソフトのユーザー補助機能やコントロールパネルを活用
- A9-5.アプリケーションソフトのズーム機能などを活用。
また、基本ソフトやアプリケーションソフトの機能を、自分に併せて設定することで使うことも可能です。 - A9-6.Windowsはにはナレーター、Mac OSには、VoiceOverがあります。
Windowsの場合、PC TalkerやJAWS、NVDAをインストールすることができます。 - A9-7.iPhoneやiPadには、VoiceOverがあります。
- A9-8.スマートフォン(Android)は画面読み上げアプリをインストールして使うことができます。
Q10.視覚障害者はパソコンスキルをどこで習うことができるでしょうか?
A10.業務で必要とされるレベルのスキルを身につけるには「視覚障害者を対象にビジネスパソコン」を教えてくれるところへ行きます。
高齢・障害・求職者雇用支援機構が公開している視覚障害者の就労に関する資料があります。
相談先としては、次のようなところがあります。
- A10-1.地域の障害者職業センター
- A10-2.市区町村の福祉課の就労支援担当
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A10-3.視覚障害者の職業リハビリテーションを行っている施設。例えば
- 国立職業リハビリテーションセンター(埼玉)
- 日本ライトハウス(大阪)
- 日本盲人職能開発センター(東京)
- 視覚障害者就労生涯学習支援センター(東京)等
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A10-4.就労移行訓練を行っている施設
- 東京都視覚障害者生活支援センター(東京)等
- 5.多様な障害への支援情報を提供している 地域ITサポートセンター